甲状腺疾患（Thyroid Disease）：知っておくべきこと

甲状腺とは、首に位置する重要な器官であり、甲状腺ホルモンを分泌して身体の代謝を調節します。甲状腺の機能障害は、エネルギー代謝の異常、心拍数の調整、さらには気分の変動など、さまざまな健康面に影響を及ぼします。

甲状腺疾患とは？

甲状腺は2種類の主要ホルモンであるT3（トリヨードサイロニン）とT4（サイロキシン）を生成します。これらのホルモンは、エネルギー代謝、体温調節、心拍数、成長、脳の発達など多くの身体機能を制御しています。甲状腺が過剰に機能すると過活動（甲状腺機能亢進症）、逆に機能が低下すると低活動（甲状腺機能低下症）となり、異なる症状を引き起こします。

甲状腺疾患の種類

1. 甲状腺機能亢進症（Hyperthyroidism）

甲状腺ホルモンの過剰生成により代謝が促進され、体重減少、落ち着きのなさ、動悸、多汗、熱感に対する耐性低下、イライラ感などが見られます。主な原因は以下の通りです。

• 1.1 バセドウ病（Graves' Disease）

  自己免疫疾患で、甲状腺機能亢進症の最も一般的な原因。25～40歳の女性に多く、眼球突出が特徴的な症状の一つです。

• 1.2 甲状腺結節（Thyroid Nodules）

  原因は明確ではありませんが、多くは良性です。ただし、ホルモンを過剰産生する結節は甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性があります。

2. 甲状腺機能低下症（Hypothyroidism）

ホルモン生成不足により代謝が低下し、体重増加、疲労、便秘、乾燥肌、寒さへの過敏、うつ状態などの症状が現れます。主な原因は以下の通りです。

• 2.1 慢性甲状腺炎（Hashimoto病）

  自己免疫疾患の一種で、免疫系が甲状腺を攻撃し炎症と機能低下を引き起こします。

• 2.2 ヨウ素欠乏症（Iodine Deficiency）

  甲状腺ホルモン生成に必須のヨウ素が不足すると甲状腺腫（goiter）を引き起こし、ホルモン産生や身体の成長に悪影響を及ぼします。ヨウ素強化塩の利用が少ない地域で多く見られます。

甲状腺疾患の診断

心拍数の異常（速すぎる・遅すぎる）、体重の急激な増減、温度感覚の異常、気分不安定などの異常が見られた場合、血液検査で甲状腺刺激ホルモン（TSH）値を測定することで甲状腺機能の過不足を評価します。超音波検査などの画像診断も異常検出に用いられます。

治療法

1. 薬物療法

   過活動症にはメチマゾールやプロピルチオウラシルが処方され、ホルモン生成を抑えます。低活動症にはホルモン補充としてレボチロキシンが投与されます。

2. 放射性ヨウ素療法

   重症例や薬物療法非効果例に対し、放射性ヨウ素131を内服し甲状腺を縮小させます。

3. 手術療法

   甲状腺全摘術（甲状腺切除手術）は最後の手段で、術後は終生ホルモン補充が必要です。

自己管理のコツ

1. ヨウ素摂取の増加

   魚介類やヨウ素強化塩を摂ることでホルモン生成をサポート。

2. 甲状腺機能を妨げる食品（goitrogens）の回避

   キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、マスタードグリーン、特定の豆類やタマネギなどに含まれます。

3. 十分な休息とストレス管理

   睡眠はホルモン調整に不可欠。慢性的なストレスは甲状腺疾患悪化・代謝乱れ・食生活の乱れを招きます。

まとめ

甲状腺疾患は早期診断と適切な治療で管理可能です。症状を自覚したら医療機関で検査を受け、専門家の指示に従いましょう。甲状腺は身体の多数の機能に関わる重要な内分泌腺であり、健康維持には注意が必要です。